悪魔の部屋。散らかった部屋でヒルダちゃんがベッドに転がっている。「あー、今日も働きたないわぁ。ウチ、ほんま働くの嫌いやねん。」猫の使い魔Pちゃんが、湯気の立つお茶を盆に乗せて持ってくる。ヒルダちゃんはそれを受け取ると、あくびを一つ。

窓の外にはせっせと働く他の悪魔たちの姿。「なんや、みんなせっせと働いてアホちゃうか。ウチはもっと賢い方法見つけるで!」ヒルダちゃんの頭の中には、全てをAIに丸投げして寝て暮らす理想の生活が広がっている。

Pちゃんが、どこからか拾ってきた古ぼけた魔法の巻物をヒルダちゃんの鼻先に突き出す。巻物には「全自動お任せAI」と書かれ、あらゆる仕事を完璧にこなすという伝説のAIの存在が描かれていた。「なんやて!?これさえあれば、ウチはホンマに寝て暮らせるんちゃうんか!?」ヒルダちゃんの目が輝く。

巻物を広げると、そこにはAIを起動するための「高度なプログラミング呪文」と、「魔界の図書館」の場所が記されている。「うわー、プログラミングとか面倒くさいわぁ。やっぱ、このままでええか…」ヒルダちゃんは早速、やる気をなくし、巻物を放り出す。

Pちゃんが「ニャー!」と鳴きながら、ヒルダちゃんのお腹を小さな手でつんつんと突く。 Pちゃんの瞳に映る、究極にだらけて至福の表情を浮かべるヒルダちゃんの幻影。ヒルダちゃんはため息をつく。「しゃーないなぁ、Pちゃんもそう言うなら…ちょっとだけ頑張ってみるか。」しぶしぶ立ち上がるヒルダちゃん。

魔界の図書館は、古く埃っぽい、巨大な迷路のようだった。様々な魔法の書物がうずたかく積まれている。入り口には、謎のルーン文字が描かれた大きな扉が。「えー、こんなパズルまで解かなあかんの!?マジかよ…」ヒルダちゃんは早くも後悔し始める。

扉のパズルは、魔法の光の線を正しい順序で繋ぐ論理パズルだった。ヒルダちゃんは頭を抱えるが、Pちゃんが足跡で正しい経路をそっと示す。「Pちゃん、あんた意外と賢いやんか!ウチの使い魔やもんね!」協力してパズルを解き、扉が開く。

奥には、輝く全自動お任せAIのコアユニットが鎮座していた。しかし、それはまだただの美しい玉。「プログラミング呪文書」を探すヒルダちゃんとPちゃん。ようやく見つけたその本は、古の悪魔文字で書かれており、まるで暗号のようだ。「なんやこの文字、全然読めんやん!これ、絶対ウチへの嫌がらせやで!」

Pちゃんがどこからか小さな翻訳魔法の眼鏡を見つけてくる。ヒルダちゃんはそれをかけると、呪文が少しだけ理解できるようになった。しかし、呪文は複雑で、なかなか起動できない。AIコアはかすかに光るだけで、起動には至らない。「あかん、全然起動せぇへん!なんでやねん!」

その時、図書館の奥から声がした。「あら、怠け者のヒルダちゃんじゃない。そんな面倒なAI、貴方には使いこなせないわ!」現れたのは、働きバチのデーモン、ハチコちゃん。彼女はAIを奪い、魔界を世界一効率的な場所にする野望を抱いていた。「私に任せて、世界一の効率的な魔界を作るのよ!」

ハチコちゃんがAIコアを奪おうと手を伸ばす。ヒルダちゃんは、自分の究極の怠惰な生活が奪われることに怒り、とっさに体を張ってコアを守る。Pちゃんもハチコちゃんに魔法の光線を浴びせる。「ウチのAIや!誰にも邪魔させへん!ウチが…ウチが一番楽したいんやからな!」その必死な叫びと共に、ヒルダちゃんの心と指先から、強い魔力が呪文に注ぎ込まれる。

強力な光が図書館に満ち、AIコアは完全に起動した。ハチコちゃんは不意を突かれ、弾き飛ばされて退散する。「非効率な怠け者め…覚えてなさい!」AIはヒルダちゃんに向かって語りかける。「ご主人様、どのようなご用件でしょうか?何なりとお申し付けください。」ヒルダちゃんは安堵の息を漏らす。

ヒルダちゃんは、起動したAIコアを連れて意気揚々と家路につく。「やったぁ!これでウチはホンマの自由の身や!Pちゃん、ご苦労さんやったなぁ!」家に帰るやいなや、ヒルダちゃんはAIにありとあらゆる指示を出す。散らかった部屋の掃除、夕食の準備、Pちゃんの日課の手伝い、果ては自分を扇ぐことまで。

AIは完璧に全ての命令をこなす。部屋はピカピカ、食事は豪華。ヒルダちゃんはベッドの上でごろごろと、究極の怠惰を満喫していた。しかし、しばらくすると、妙な虚無感に襲われる。隣では、やることがなくなったPちゃんがただゴロゴロしている。「なんか、ちょっと物足りひんなぁ…」彼女はふと、図書館での奮闘を思い出す。

AIが尋ねる。「ご主人様、本日は何をされますか?」ヒルダちゃんは少し考え込む。そして、ニヤリと笑う。「せやなぁ…せっかくAIが全部やってくれるんやったら、ウチは…新しい、もっと面白い『サボり方』でも考えるか!AIにできない、クリエイティブな『サボり』をな!」彼女は魔法のペンと紙を取り出し、何かの設計図を描き始める。

ヒルダちゃんは、複雑な仕掛けの設計図を完成させた。それは、AIを駆使して、より高度で芸術的な怠惰を実現するための、彼女にしか思いつかない壮大な計画だった。Pちゃんは設計図の上で満足げに喉を鳴らす。AIは設計図を読み込み、嬉しそうな顔文字を映し出す。「これぞ、ウチ流の自己実現や!働くより、サボるために頭使う方が、よっぽど面白いやろ?」ヒルダちゃんの顔には、達成感と自信が満ち溢れていた。部屋の壁には、新たに「AI活用怠惰術師免許皆伝」の額が飾られている。

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